半導体革命 No.2
1.熊本の田舎町が変容
熊本空港の北側に位置する熊本県菊陽町、人口4万3000人ほどの小さな町だった。2022年の春、半導体工場の建設がこの地で始まる。新工場の建設は、ほぼ24時間体制で進められ菊陽町が眠らない街へと一変した。
新工場は2月24日に開所式が開かれた。日本で最先端の半導体工場になると同時に、過去最大の半導体投資プロジェクトだ。投資総額約86億ドル(約1兆2900億円)のうち、日本政府の補助金は4760億円にのぼる。
半導体の新工場はTSMC(台湾積体電路製造)とソニー、デンソーが共同出資したJASM(ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング)が担う。
2.半導体とは
2020年後半からの世界で半導体不足が生じ、家電から自動車他の多くの社会インフラを支える製品にまで影響を受けた。今や半導体は、民生・産業機器向け需要だけでなく誘導ミサイルやレーダー等に欠かせない。
半導体は殆どの電子部品に使用され、センサーからメモリ、トランジスタ、ダイオードなどの種類がある。スマートフォンに搭載されている半導体は100個から200個、自動車(ガソリン車)は1,000個程度。
搭載される半導体の数が大幅に増加するEV(電気自動車)は2,000個以上必要とされる。さらに自動運転に進化していくと半導体需要は飛躍的に増える。AI搭載の製品はその半導体需要を押し上げる。
3.半導体製造
世界の半導体の約7割を台湾企業が生産。半導体産業は、産業構造が複雑で、精密性と難易度が高い。製造工程が数百に上り、半導体産業は資本集約型で知識集約型でもある。巨額の資金と長期的な投資が不可欠だ。
半導体受託生産で世界トップのTSMCはiPhoneのチップやNVIDIA(エヌビディア)のGPU(画像処理半導体)の受託製造をする。ハイエンド半導体のプロセス技術の9割を独占する。
TSMCは従業員6万5000人のうち約5万人がエンジニアで、修士課程及び博士課程修了者がその9割を占めている。TSMCは半導体生産のコア技術を自社で握り、大手半導体メーカーは依存せざるを得ない。
TSMCの創業は1987年、日本の半導体が世界を席巻していた時代だった。1980年代、日本の半導体世界シェアは約50%あったが今は6%を切る。
(Written by 川下行三 24/05/25)