賃上げは進むだろうか 2024
1.実質賃金の減少が止まらない
2月6日、厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(令和5年分結果速報)では、一人あたりの実質賃金は2022年に比べ-2.5%と2年連続で減少。消費増税後の2014年-2.8%以来9年ぶりの減少幅と大きい。
総務省が1月19日に発表した2023年度平均の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比3.1%の上昇と41年振りの高い上昇率を記録。
2月21日に内閣府が発表した月例経済報告で国内の景気判断を下方修正。個人消費は「持ち直している」から「持ち直しに足踏みがみられる」と下方へ。基調判断は、「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」。
2.春闘が始まった
春闘が始まった、大手は3%から5%の攻防と予測。先頭を走る形で、イオンリテールが正社員の賃上げを平均6.39%(1万9751円)で妥結。そして、パート従業員の時給を7.02%満額回答の賃上げで決着。
連合は昨年12月に2024春季生活闘争方針で賃上げ分3%以上、定昇相当分を含め5%以上の賃上げを目安とする。中小組合で賃金実態が把握できてない事情がある場合は、15,000円以上を目安とすると掲げた。
しかし、中小企業は厳しい状況が続く。原材料価格や燃料価格の高騰などコスト増加分を十分に価格転嫁できていない。売上げや利益の確保が難しく賃上げが実施出来ない企業も多い。
某大企業は下請け企業にコストダウンを迫ってくる。公正取引委員会は価格転嫁を促すための指針を昨年公表したが、あまり進んでいない。
3.中小企業の見通し
日本政策金融公庫が12月に発表した2024年の中小企業の景況見通しで、「改善」が29.1%「悪化」は16.4%「横ばい」は54.5%、業況判断DI(見通し)は12.7と、2023年実績の8.2から4.5ポイント回復。
中小企業景況調査のDI(Diffusion Index)は、前年同期比または前期比で、「改善」と回答した企業比率から「悪化」と回答した企業比率を引いた数値(三大都市圏の製造業を中心に571社が回答)。
業況判断DIの2024年の見通しから見えるのは、電機・電子関連、設備投資関連、建設関連で上昇する。乗用車関連、食生活関連、衣生活関連は低下する見通し。
先行き堅調な企業業績と賃上げで、景気は緩やかな回復基調に戻る。
(Written by 川下行三 24/02/25)