高齢者の雇用
1.雇用継続の実態
国は老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳に引き上げ、その代わり企業に雇用を継続させるように法律を制定、それが高年齢者雇用安定法。2021年にその法律を改正し、70歳までの就業確保を努力義務とした。
雇用継続された60歳-65歳の高齢者は高年齢雇用継続給付金により、賃金の15%が給付金として支給された。しかし、2025年4月からその給付金は段階的に縮小され廃止の方向に決まった。
厚生労働省が2023年に調査した高年齢者雇用状況報告によると継続雇用制度で対応している企業は約7割、定年制の廃止は約4%、定年の引き上げを実施している企業は27%と少ない。
2.働くことを希望する高齢者
昨年7月に65歳直前で中小企業を退職したK。Kは45年勤続、退職金と積立金を受領。年金も十分な額を支給されるが、老後の不安を漏らす。ハローワークに通い2024年1月に再就職。
ハローワークで職を探す65歳以上の高齢者は2023年で平均25万人いる。2012年の有効求職者数は平均約10万人、11年で2.5倍に増えた。但し、就職できた高齢者は2023年11月で20.7%と就職率は低い。
65歳より上の就業者数は2012年より328万人増え924万人(全就業者数は6780万人)。25-44歳の2012年就業者数2706万人から2023年11月2399万人と307万人減り、65歳以上の就業者数の増加を相殺している。
3.定年を迎えた労働者
内閣府の調査(2020年)では、高齢者が就労の継続を希望する理由は収入が欲しいからが51%と高い。2030年には人口が1億2千万人を切り、65歳以上の人口は3700万人と総人口の3割に達する。
60歳で定年を迎えた中堅商社F社のB。定年前と同じ仕事で雇用継続になり、賃金は3割下がった。Bはその条件で3年働き63歳で会社を去った。
中小製造業N社で20年勤務し60歳で定年退職したH。退職前と同じ仕事で継続するなら賃金は4割減ると言われ退職を決断。
コロナ直前にアジアから帰国したY、65歳。中国、アジア各国で駐在した経験も有り2024年4月からS大学に、この様にうまく就職できたケースは珍しい。働くことを希望する高齢者は多いが、現実は厳しい。
(Written by 川下行三 24/01/10)