欧州からリセッションが始まる
1.金融不安が始まる
金融王国スイスで2位クレディ・スイスを破綻寸前、スイス最大手の銀行UBSが買収したのが3月。そして同月、米国のシリコンバレー銀行が破綻した。原因は違うが、世界で金融不安が一気に広まった。
クレディ・スイスは1856年(日本では安政3年、米国ハリスが来日、日米修好通商条約が結ばれた年)の創業。歴史のある著名な銀行で、主に富裕層へのビジネス、投資銀行業務等様々な金融サービスを行ってきた。
リーマン・ショックは、リーマン・ブラザースの破綻が引き金となって世界金融危機に発展した。クレディ・スイスの破綻が回避され、欧州の主要銀行の2023年4-6月期決算は増益となり金融不安は収束した。
2.ドイツの停滞
7月31日、EUの統計局が発表したユーロ圏の2023年4-6月期GDP成長率は前期比0.3%。2022年10-12月期のマイナス成長、1-3月期のゼロ成長からは回復しつつあるが、ドイツは4-6月前期比0.0%と苦戦。
EUの稼ぎ頭はドイツ。そのドイツは景気の悪化が続く。ドイツの国内化学・医薬品企業の今年の売上高は10数%減少するだろうと化学団体が予測している。
ドイツは、ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス等のエネルギー高や優良顧客・中国の失速なども影響はしている。しかし、インフレは解消しつつある中、ドイツ国民の倹約が国内消費の足かせになっている。
3.欧州の今後
7月に発表した国際通貨基金(IMF)の世界経済成長率は2023年2.8%から3.0%と4月見通しから0.2%高くなった。しかし、2022年の3.5%より減速している。ユーロ圏は2023年0.9%、2024年1.5%と依然厳しい。
2023年 米国 1.8% ドイツ -0.3% 日本 1.4% 中国 5.2% 2024年 米国 1.0% ドイツ 1.3% 日本 1.0% 中国 4.5% ※世界経済見通し(WEO)2023年7月改訂版/世界経済成長率予測
ドイツの2023年、4月見通しではー0.1%から7月見通しは-0.3%と拡大している。景気への影響が大きいインフレ。IMFの見通しでは世界の総合インフレ率は2022年8.7%、2023年6.8%、2024年5.2%へと鈍化する。
(Written by 川下行三 23/08/10)