2050年
1.どこでもコンピューティング
1989年にXerox社のパロアルト研究所がユビキタス・コンピューティング(ubiquitous computing)という概念を提唱した。日本では、1989年末に日経平均株価が38,957円の史上最高値を記録した年である。
ユビキタス・コンピューティングは、生活や社会の至る所にコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作することにより、人間の生活を強力にバックアップする情報環境だ。
そのユビキタス・コンピューティングを推奨した東京大学の坂村健は、「どこにでもコンピュータ能力があること」と分かりやすい表現を使った。これは、「あらゆるものがインターネットにつながる」IoTの起源だ。
2.IoTで何が変化するのか
坂村健は、1980年代に提唱した自動車や携帯電話などに幅広く採用されている組み込みソフト/基本ソフト トロン(TRON)をリードしてきた。そして、IoT機器の多くは、このトロンが採用されている。
IoT技術開発の遅れに彼は警鐘を鳴らす。5G(第5世代通信規格)などを通じIoT社会の実現が近づくが、日本企業は中国や米国企業の後塵を追っている。
「薬のビンが他の薬ビンとともに副作用を警告してくれたり、ゴミが焼却炉と交信して、自分自身を分別したり、処理方法を教えたり」といったことが、どこでもコンピューティングにより実現する。30年前の予言だ。
3.30年後を読む
1980年代の後半、インターネットはまだ大学や研究機関で実用化が始まった。1994年、ウェブブラウザがネットスケープ(Netscape)よりベータ版として市場に投入された。ここから世界は大きく変化した。
2050年、どのような時代が始まっているのか。30年前に予測された世界がやっと始まろうとしている。日本の人口は1億人を切り、世界の人口は100億人に近づく。
30年後を予測しよう。自動運転が実用化し、交通事故の無い社会が実現する。ロボットが家事や介護や育児を代行する。ドローンに乗り自由に空を飛ぶ。人の脳にコンピュータを埋め込みワークスタイルが激変する。
技術が進化し、実現する可能性は飛躍的に高まるかも知れない。
(Written by 川下行三 19/12/29)