長寿企業の秘密
1.100年企業
日本は世界の中でも突出して創業100年以上の企業が多い。100年前の1919年は大正8年。第一次世界大戦が前年に終結し、建設ラッシュが続く好景気の時代であった。
明治の後半または大正時代に創業し、昭和に入り株式会社として設立した多くの企業は、同族経営だ。現社長は5代目や6代目にあたり、中には上場している企業もある。
第二次世界大戦後には雨後の竹の子のように産声を上げた企業の社歴も60年~70年。やはり同族が多く、3代目、4代目の社長が経営の舵取りをしている。
2.良縁をどう担保するのか
企業の目的は、利益を上げる、社会に貢献する、そして事業を継続する。
この継続が一番難しい。事業を引継ぐことを事業承継と言うが、ここに決まった法則が無い。特に、同族会社は社長の息子や娘婿に継がせる。
血縁が継続の要であるならば、良縁を計画的に意図して行かねばならない。事業承継では、そのような事が語られることは少ない。株や資産の承継が中心で、早くから次期承継者を決めて用意周到に準備することは無い。
100年企業の経営者と語る機会があった。先代が亡くなり継承した。何の準備も無く、悪戦苦闘した。そのようなケースも多い。その経験を次に生かすべく手を打っているように見えない。
3.観を引き継ぐ
事業承継に王道や法則が無いとすれば、各会社で作るしかない。関東のある会社は、オーナーは株を持っているが社長は社員から登用し経営を任せている。上場企業にも見かけることがある。
オーナーの承継と、会社の承継が分かれる。中小企業は社長のカラーに染まる。これからの事業環境の変化は、この100年よりも激しいものになる。その変化の波を乗り切って行く経営が求められる。
事業観、経営観はAIに頼ることが出来ない。長年の継続から生まれるものだろう。それをどう伝え、後継者を育成して行くのか。経営理念が有り、家訓が有る。そして事業を見る目がある。
(Written by 川下行三 19/11/28)