リーダーシップが問われる No.1
1.米国のトランプ新大統領はどこへ行く
1月20日の大統領就任式以降、大統領令を乱発。反トランプに揺れる米国内だけではなく、他国で大規模なデモが行われている。こんな事態を誰が予測出来ただろうか。トランプに投票した人々も自戒の念に苛まれていることだろう。
強いリーダーシップを発揮し、暴れる猛牛のように突っ走るトランプを止められる人はいない。このような専制君主型のリーダーシップは欧州を大混乱に陥れた大戦後は陰を潜めたように思ったが、ここに存在した。
目まぐるしく変わる世界で、30年間冬眠をしていた様なトップが君臨し、世界に発信して行くことは何を意味するのか熟慮が必要だ。ビジネスが全てでは無い。損得勘定だけで政治を司ることの危険は歴史が証明している。
2.リーダーシップの原則論
リーダーシップはリーダーが目標に向かってメンバーを導き、その目標を達成すべきものだと一般的には解釈されている。しかし、現在のように政治や経済環境が目まぐるしく変化している時は、目標やビジョンを描けていない組織も多い。
変革型リーダーシップを唱える米国の研究者コッターは、「変化をつくる」「変革を成し遂げる」がリーダーシップの要だと論じている。そして、リーダーにはビジョンを明確にし、変革を起こそうという強烈なエネルギーが備わっていないと、それを達成して行くことは出来ない。
リーダーシップ研究者のウォーレン・ベニスは、リーダーシップとは人格そのものだ。正直であること、誠実さ、謙虚な姿勢など人間の信頼関係をつくる基礎が備わっていることとしている。対人能力そのものだ。
3.高い対人能力と変化を成し遂げる力
1950~60年代に、九州大学の三隅二不二氏がPM理論と言うリーダーシップ理論を提唱した。リーダーシップの潜在的な資質からリーダーシップ行動に焦点をあて、科学的、客観的なデータを元に2つの特徴的な行動を導き出した。
リーダーシップ機能には、Performance:P(業務の達成)とMaintenance:M(集団の維持)がある。Pは組織における目標達成に指向したリーダーの働きで有り、Mは集団や組織体の過程を維持強化する働きを意味する。
このPM論が、激変の21世紀のリーダーシップ論にも通用する。高い対人能力はM、集団の維持に培われる能力だ。そして、変化を成し遂げる力はP、目標を達成する能力に値する。
オバマの政策を否定し、変化を成し遂げようとするトランプのエネルギーは余り有るかも知れないが、米国や世界を導く方向を見失わないことを期待したい。
(Written by 川下行三 17/02/01)