変化対応と世襲
1.中小企業と大企業格差
日本の事業者数の99.7%は中小企業で僅か0.3%が大企業になる。そしてその一部が株式上場している公開企業という割合を聞くと驚く方が多い。
全雇用者数の97%は中小企業の雇用者だ。
ところが、政府自民党は中小企業施策や労働者寄りの政策よりも、大企業に有利な法律を粛々と作っている。自民党が声を聞くのは経団連などの経営者団体、そして大票田が期待出来る農業従事者となる。
付加価値の高い事業を行っているのは大企業で、多くの中小企業は儲からない仕事をコツコツとこなしている。大企業で働くか中小企業で働くかによって、生涯賃金は大きく差が開く。
2.大企業における専門経営者の不足
大企業で社員から上り詰めた社長の失策が続く。社内昇進を果たした経営者は会社の羅針盤を示せていない。意志決定の遅さも欧米の経営者との違いだろう。変化が激しい時代には合議制は役に立たない。
規模が拡大すると社長の仕事の質が変わる。抱えてる責任や課題も違い欧米に見る専門経営者に経営を委ねると言うオーナーも増えている。
教科書的な言い方になるが資本と経営の分離を進めないといけない。
専門経営者は成果を引っさげて企業を渡り歩く。そんな経営の専門知識を持ち経験の豊かな人材は、全く持って不足している。株主総会を前に経営権を巡るきな臭い争いが多発しているのはその現れかも知れない。
3.事業承継
事業者数は確実に減っている。毎年、廃業をする会社や商店が多い。
日本の人口減少に歯止めがからない中で、起業よりも廃業が増加すれば活気の無い街が増えるだけだ。
廃業の大きな原因は景気悪化よりも後を継ぐ人がいない。事業承継者が育っていない。オーナー一族で無くとも、経営を任せられる人材を育てていれば会社は維持出来る。
オーナーは出来れば息子に継がせたい。それも少子化の中では難しい選択になる。セブン&アイの鈴木会長が退任をする。「変化対応」これが鈴木会長の口癖。
この理念が次世代にも浸透していれば、後数年はセブン&アイも揺るぎの無い経営をするだろうが、これが伝承されていなければ後退もあり得るだろう。
(Written by 川下行三 16/04/20)