産業再生の真実
1.エルピーダ倒産の衝撃
この2月27日に会社更生法を申請し経営破綻したエルピーダメモリ。負債総額が4,480億円と歴史に残る大型倒産となった。3月28日に上場廃止、今後は債権者を探す険しい道のりとなる。
1999年、NECと日立製作所の半導体事業を統合しスタート。2003年、三菱電機の半導体事業を譲り受ける。統合前のNECと日立のシェアを併せて20%、「DRAM」事業では世界トップだった。
2009年、リーマンショックに傷ついた同社に、政府は産業活力再生法を活用し、280億円の公的資金を投入。その後V字回復は果たしたが既に、サムソンやハイニックスなどの韓国企業の後塵を拝していた。
2.シャパンディスプレィは同じ轍を踏むか
日立製作所と、東芝、ソニーが中小型液晶パネル事業を統合した「ジャパンディスプレイ」が4月1日に事業を開始した。官民ファンドの「産業革新機構」が約7割の2,000億円を出資した。
スマートフォンに使われる中小型液晶パネルは、シャープが首位だったが現在はサムソンが20%を超えてトップに躍り出た。順調に生産が開始されれば同社がいきなりトップだと言うが、3社計で18%と僅かに届かない。
同社の社長は、エルピーダメモリーの前社長という経歴に首をかしげる。
韓国企業とスピードが違う日本のエレクトロニクスメーカー。市場の変化を感じ取り、投資への意志決定をいかに早く回すかが問われる。
3.産業再生政策は迷走
ジャパンディスプレイに投資した「産業革新機構」は、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に基づき設立された官民出資の投資ファンドで経済産業省の肝いりだ。
リーマン・ショック以降に、経済産業省がもう一つ手がけたたのが企業の再生支援を行う「企業再生支援機構」で、日本航空への出資で一躍有名になった。PHSのウィルコムも同機構の出資先になる。
様々な法律を作っては、企業再生や経済活動を財務省や経済産業省がリードするが、ここ数年結果は芳しくない。弱体化した産業や企業に公的資金を投入、新設した機構に天下りを送り込む等、血税を無駄にする。
日本政府は余計な政策を実行せず、企業を見守るべき時かも知れない。
(Written by 川下行三 12/04/16)