福祉国家と高齢化 No.1
1.福祉国家、日本の現実
資本主義の中で貧富の差を修正し、社会保障制度を充実させる。そして雇用の確保をはかる。
国民が健康で文化的な生活を送れることを保障し、福祉の増進をする国家を福祉国家と言う。
日本国憲法の第二十五条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。
正しく、日本は福祉国家を目指しているが、超高齢化のスピードに追いつけず、社会保障費の増大に耐えきれない。所得の格差は拡がり、福祉国家は遠ざかる。
2.北欧が目指す福祉国家
北欧諸国が目指す福祉国家は、社会民主主義的な特徴を持つ。福祉国家の代表的なモデルでもある。政府が社会保障給付を行い、労働者に手厚い政策を行う。
同一労働同一賃金や、職業訓練や職業紹介などの政策を通じて転職が容易になる。雇用の流動性が高まり、離職率が減る。雇用の確保が、社会保障支出をコントロールする最大の手法だ。
そうした人材の質と量により、グローバリズムへの適応力が高い。グローバルな競争に秀でた企業も多く、税負担は高いが高福祉が国民の幸福感と豊かさを実現している。世界競争力ランキングでも北欧諸国は常にトップを維持している。
3.アジアの福祉国家とは
アジアの文化は、ヨーロッパ諸国とは違う。ドイツの福祉政策、北欧やイギリスとも違う。また、米国の自由主義的な福祉政策とも一線を引く。中国、韓国、日本などアジアには合わない。
日本では数十年前まで、家族が責任を持って高齢者の面倒から子育て、仕事の面倒を見てきた。中国は今でも大家族や一族の繋がりが強い。しかし高齢化が、それを阻む。企業も国家も面倒を見切れない。
沖縄では「ゆいまーる」と言う相互扶助、労働の助け合いや「もあい」が存在し、地域に根付いている。「もあい」は頼母子講の一種だが、みんなで一定額を積み立てて、順番に受け取り使っていく。
バングラデシュで拡がるマイクロファイナンスは、少し違う。貧困層が無担保で融資を受けることができる。グラミン銀行が1983年に始め、多くの貧しい人々を自立させている。一つの福祉政策の方向だろう。
(Written by 川下行三 12/02/01)