企業の危機管理 No.2
1.経営を揺るがす震災リスク
2004年10月23日、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の大震災が発生した。当時、避難した住民は最大で約10万3000人を数えた。家屋の全半壊はおよそ1万6000棟に上ったが事業所の被害も大きかった。
三洋電機子会社の半導体工場が被災。500億円超の被害があったが地震保険に加入していなかった為に当期に損失として計上。2005年3月期は1715億円の赤字決算に。そして再建が進まずパナソニックの買収へと転落する。
地震のリスクを日本の企業はどれだけ経営に加味しているのか。三洋電機の例はその象徴だ。ダイエーが凋落して行くきっかけは、阪神大震災で基幹店が被災したことだ。東日本大震災で経営に歪みが出る企業は多い。
2.事業リスクをどう考えるか
2005年2月、ライブドアがニッポン放送株を時間外取引で取得。フジテレビも巻き込んだ事件に発展。翌2006年1月証券取引法違反で堀江貴文を含むライブドア幹部4名が逮捕される。
マスコミを賑わしたこのライブドア事件は、資本の在り方、株式公開のリスクを如実に現している。ニッポン放送やフジテレビに認識の甘さがあったことは明確だ。
株式公開買い付けなどは、米国の話で日本の株式市場では、関係のないことだと思っている経営者が多い。法律で定められたルールを知らなかったでは済まない。上場のメリット・デメリットを再考すべきだ。
3.グローバル展開のリスク
日本の市場は有望ではない。少子高齢化で消費は減退する。これからは中国を始めとするアジアが成長する。海外への進出無しに成長は維持出来ない。上場企業は勿論の事、中小企業もこぞって海外へと目を向ける。
プラスチック成型で某S電機のオーディオ部品を製造していたT社。二代目社長のN氏は理論的で行動力抜群。若手経営者の中でも優秀さは群を抜いていた。S電機の海外展開と共にT社もアジアを中心に進出。
1990年、中小企業の海外進出成功のモデル企業と持てはやされた。しかし、1997年7月タイで始まったアジアの通貨危機が引き金となって、T社は倒産。その数年後、若くしてN氏は亡くなった。
時代を読む、感性を磨く、これだけでは不十分だ。天災のように予測がつかない出来事は今後、頻繁に起こるだろう。企業には備えと事業継続の計画が絶対必要だ。今からでも遅くない。
(Written by 川下行三 11/03/31)