家族の崩壊が何を意味するか No.1
1.強固な母子関係
ノンフィクション部門の売り上げトップを走る「中学生ホームレス」。
出版元のワニブックスでは発売後、驚異的なセールスを記録している。
漫才師、麒麟の田村が執筆、その過酷な体験が感動を呼んだ。
父親の解散から始まる家庭崩壊が物語の始まりであるが、田村と母親の母子関係が涙を誘う場面を数多く提供する。彼は、高校生になっても母親の死を直視できずに悩み迷走する。
2005年発売後、ベストセラーにもなった「東京タワー」。サブタイトルの「オカンとボクと時々オトン」の名前通り、主人公と母、父の関係で話しが展開する。この実話も息子と母親の強固な関係が浮かび上がる。
2.母、娘の新たな関係
外国のジャーナリストが、東京で、中高年の女性と若い娘がショッピングや食事を楽しむ光景に驚く。それは、母、娘の親子二人だから。欧米には無いカップルだと言う。
「中学生ホームレス」や「東京タワー」は母と息子。今までよくある関係であるが、この母、娘は新たな家族関係を浮き彫りにしている。父親不在が明確だ。
家族の中での母親の役割は愛情や優しさ、家族関係の維持を請け負う。
父親は、社会の規範や権威、責任などを伝える厳しい役割を持つ。この役割が崩壊しつつある。優しい父親の登場であり、母親の活躍であろう。
3.家庭から職場へ
家庭で起こっていることは、既に職場でも起こりつつある。絶対的な権威が消滅。リーダーの不在と呼ばれるのも頷ける。では、ヘッドシップと呼ばれる権力や命令で人を動かせる時代でもない。
ある中小企業の二代目は、業績や目標達成などの役割を営業部長にまかせ、自身は人間関係の維持、強化に力を注ぐ。1950年代に理論化されたPM論に当てはめると、社長はM・メンテナンス(集団の維持)、営業部長はP・パフォーマンス(業務の達成)という役割を担っている。
このPM両方の能力が高いリーダーシップが理想である。Pはイヤな役目である。集団にとっては煙たい存在になる。父親も同じであろう。好かれたいとは思わない。しかし、嫌われる必要もない。
高い理想や理念を掲げ、背中で見せる威厳を復活して欲しい。リーダーとは孤独であることを自覚すべきだ。
(Written by 川下行三 07/12/05)