2016年を読む・何が変わり何が残るか No.2
1.バーチャルとリアリティー
電子データに置き換えられた情報が巷を行き交う。携帯電話での会話も、音声でのデジタルデータとしてあなたの頭を横切る。テレビの放送もまもなくデジタル化される。アナウンサーの笑顔や声が、一度電子信号に変換され、また自宅の受像器で蘇る。
会話と言うリアルなコミュニケーションでさえ、コンピュータの世界を通過して実現する。デジタル化されたものが、イコールバーチャルではないが、バーチャル(仮想現実)な世界は益々進化している。
パソコンの画面でのやりとり。億がつく単位の金が簡単に動く。電子信号が思わぬ結果を生む。魚の市場は、ぶつを見て競り落とすが、金融市場は雲をつかむような情報やパソコン画面を頼りに売買を行う。意図しない事が起こることを想定しておくべきだろう。
2.ユビキタス・コンピューティング
生活や社会の至る所にコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作する。1989年にXerox社のパロアルト研究所が提唱した概念で、人間の生活を強力にバックアップする。
トロンで有名な東大の坂村教授が提唱する考え方は「どこにでもコンピュータ能力があること」。例えば、薬のビンが他の薬ビンとともに副作用を警告してくれたり、ゴミが焼却炉と交信して、自分自身を分別したり、処理方法を教えたりといったように、全てのものについたコンピュータが、相互につながることを指す。
センサー付きのICタグが数年後には安価になる。あなたの上着と部屋の壁にICタグが埋め込まれると、あなたの居場所をいとも簡単にコンピュータが把握する。この部屋にはどこに誰が居るのかを。
3.漂流する若者
都会では24時間営業を行う店舗、例えばコンビニやカラオケ等の店舗が多数存在する。
歩けば良い距離にも車で移動する人々がいる。距離や時間の壁を乗り越えて、快適なニーズを満たそうと漂い続ける。
特に若者は、携帯電話によって好きな時に友達とつながり、コンビニに寄っていつでも食料を買ったり、居場所が提供される。彼らの時間を過ごすキーワードは「今を楽しく」「仲間と」「簡単に」に集約できる。
時間軸で考えると、現在が中心で将来の視点が欠ける。または、一人になって反省したり思考にふける、過去の視点も乏しい。全てが「今、ここに漂流している」。そんな彼らが、十数年後、日本の経済を支える。
4,幸せを求めて
ある高齢者のイベントで調査を行った。平均年齢が65才位で、男女比は50%。時間の過ごし方を聞いたが、多くは休息を取らずに、ひたすらボランティアや習い事、スポーツに励んでいる。
平均的な像は活動的で元気な若いおじいちゃん、おばあちゃん。今ここを楽しむよりも将来に対しての生産的な活動が多く、若者と対照的な結果になった。
若者が今ここを楽しみ、高齢者が将来に向けた活動をコツコツとやる。
2016年、働き方が変わり、働き手の意識も変わる。若者達には年金ではなく現金。お年寄りには現金ではなく夢を与える。会社はもっと変わらないと、若者にも、中高年にも、高齢者にも相手にされない存在になる。
(Written by 川下行三 06/02/13)