変化に強い企業 No.2
1.市場の変化
この6月29日に富士フイルムホールディングスの古森会長兼CEOが退任した。古森氏が社長に就任した2000年、富士フィルムの売り上げの60%がフィルム市場で急激に縮小していた。
当時、富士フィルムの世界市場でのライバルは最大手のコダック。同社は1975年に世界初のデジタラルカメラを開発した。しかし、その商用化には投資せず、フィルム市場の縮小と共に2012年経営破綻した。
光学カメラは今も現役ではあるが、市場はフィルムカメラからデジタルカメラへ。そして、携帯電話に。写真は印刷されず、オンライン上でシェアされるようになった。
2.時代の変化
デジタルカメラは1999年を境に急激に売り上げを伸ばし、2000年の出荷台数は2億2000万台を超えた。しかし、そのデジタルカメラも2010年には1000万台を割り込む。
2007年、初代iPhoneが発売された。2008年、iPhone 3GS(オートフォーカス機能カメラ搭載)が発売されスマートフォン時代に突入して行く。このカメラ市場の変遷は劇的であった。
2007年、各社のデジカメをOEMで生産していた三洋電機はデジカメ部門の売上げが2140億円あった。2008年のリーマンショックを経て、三洋電機は2012年、倒産は逃れたがパナソニックの子会社へと転換。
3.栄枯盛衰の時間は早い
2000年に社長になった古森氏は大規模なリストラを敢行。フィルムに関わる技術を使い、液晶用フィルム、富士ゼロックスが手掛ける複合機、医薬品や化粧品などの新たな成長分野を開拓、現在売上げ2兆円となる。
市場が急変する決定的瞬間を「コダック・モーメント」と言う。今は、史上まれに見る大変化が訪れている。その変化に立ち向かう勇気と行動が伴わないと市場から追放される。
あらゆる企業に、その変化が刻々と迫っている。特に歴史のある企業が危ない。日本は世界の中で希に見る長寿企業の多い国だ。アップルがApple Watchを発売したのは僅か7年前。
名門ロレックスを抜き、時計の市場シェア1位はアップルの20%。日本のカシオは2%、セイコーやシチズンは2%以下に沈む。
(Written by 川下行三 22/12/12)