未来人材への期待
1.賃金が上がらない
失われた30年と日本の低成長が続き、賃金は一向に上がらない。令和3年6月厚生労働省の調査では、日本の労働組合の推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は16.9%と低迷。
昭和58年に労働組合の組織率が30%を切って右肩下がりの傾向が続いている。労働組合の存在意義は春闘に見られる賃金交渉、賃上げだが政府から企業に賃上げを要請されるようでは役割が逆転している。
労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)が日本は1990年以降45-50%を推移し、欧米諸国(ドイツ、フランス、米国、北欧)の60%前後と比べ見劣りをする。生産性が伸びず、労働分配率も低下している。
2.一人あたりGDPと労働生産性
IMF(国際通貨基金)の2021年度統計に見る一人あたりGDP(国内総生産)の1位はルクセンブルクで136,701ドル。6位の米国69,231ドル、18位のドイツは50,795ドル、日本は28位39,340ドル。
17年前、1995年日本の一人あたりGDPは世界3位の36,425ドルで、10位の米国は28,671ドルで約8000ドル上回っていたが、今は3万ドルも差を付けられている。特に生産性(付加価値)の低さが足を引っ張っている。
OECD(経済協力開発機構)データに基づく2020年の日本の時間当たり労働生産性(労働者1人あたりが生み出す成果・付加価値)は、49.5ドルでOECD加盟38カ国中23位。米国は80.5ドルと日本の1.6倍だ。
3.未来人材ビジョン
今、グローバル経済のマイナス面が強調されているが、益々これからもグローバル化は進行して行く。経済産業省が今年5月、2030年、2050年の産業構造の転換を見据え、「未来人材ビジョン」と言う報告書を発表。
「デジタル化や脱炭素化といったメガトレンドは、必要とされる能力やスキルを変え、職種や産業の労働需要を大きく増減させ、未来を支える人材を育成・確保するには、社会システム全体の見直しの必要がある」。
これから向かうべき2つの方向性として、「旧来の日本型雇用システムからの転換」「好きなことに夢中になれる教育への転換」を掲げている。
若い人材への期待は良いが、具体策が実行されて数十年後にその結果が現れる。失われた30年ではなく、充実した30年にしたいものだ。
(Written by 川下行三 22/08/19)