陰日向に咲く
1.戦争が人生を変える
NHKの朝ドラ「おひさま」が面白い。感動を呼ぶシーンが多い。戦争が主人公達の人生を変えていく。どうしようもない状況の中でも、明るく希望を持って真摯に生きている人々を描く。
生きて帰えられるかどうかわからない出征に、家族は息子を送り出す。
「おひさま」第44話。主人公陽子の幼なじみタケオに赤紙がくる。
母親が泣き叫ぶが、タケオはみんなに、俺は一発「甲種合格」なんだ。
「やっぱうれしいもんだに合格は。肩を叩かれて日本を頼むって言われたんだよ」。胸を張るタケオ。頭も要領も悪いタケオの一世一代の台詞。
物語ではタケオは生きて帰るが、多くの若者が戦地に消えた。
2.希望は絶対に捨てるな
3月11日に突如襲った東日本大震災。傷ついた被災地の人々。悲惨な映像が流れる。
夢も希望も無くなった人々も多いだろう。政府の援助は遅々として進んでいない。
第二次世界大戦中、ドイツに侵略されアウシュビッツに閉じこめられた囚人の中で助かった人々は希望を持ち続けた人達だ。諦めなかった人が生き延びた。
太平洋戦争、数度に渡る空襲で東京や大阪は焼け野原になった。そこからはい上がった人々が我々の先輩だ。日本人の魂は、まだ壊れていない。
3.普通の人々にこそ素晴らしい人生がある
「おひさま」の脚本は、「ちゅらさん」を書いた岡田惠和氏だ。あの明るい主人公「恵理」を生んだ(放送は2001年)。「おひさま」に登場する役者の言葉が新鮮に聞こえる。
岡田氏は「おひさま」について、「戦前から戦中、戦後を通して生きた女性を描いていきます。
主人公は決して、何か大きなことを成し遂げたりしたわけではありません。普通に人生を紡いできた女性です」。
「そこにはつらいことだけではなく、喜びや笑顔もたくさんあったはず。
このドラマはそんなごく普通の生活者たちを描いていきます」。普通の人々、陰日向に咲く人生が素晴らしい。タケオはそう語っている。
(Written by 川下行三 11/06/13)