地球はどこに向かうのか
1.人間と生物の共生
年末年始とテレビ番組で南米大陸やアフリカなどを巡る番組が複数放映された。南米には数百万種の生物が存在している。その種類の多さにも驚くが、その生態、または生物の共生や循環は想像を超える。
旭山動物園では2008年に「人と野生生物の関わりを考える会」を立ち上げ、動物園近くの永山新川での自然観察会を実施している。そこに、一万羽近くの白鳥が飛来する。その活動は、人と生物の共生がテーマだ。
その白鳥に複数の人が餌つけする。善意の行動だろうが、野鳥の糞が人を媒介としてウイルスが広まる可能性や、餌が川に沈殿し環境汚染にも繋がる。彼らは、それが生態系に影響を与えていることを知らない。
2.世界の関心は、生物多様性
生物多様性は、1992年にブラジルで開催された「地球サミット」で定義づけされた。「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」と大変難しい。
「生物多様性条約:Convention on Biological Diversity)」は、地球サミットの直前に採択され、サミット参加国が署名し1993年に発効。現在、193の国と地域が締結をしている。
その条約は多様な生き物や生息環境を守り、その恵みを将来にわたって利用する為のものだ。昨年10月、名古屋で生物多様性条約の締約国会議「COP(Conference of the Parties)10」が開催された。
3.日本での生物多様性
日本では2008年「生物多様性基本法」が施行。生物の多様性を将来にわたり確保するため、国、地方公共団体、事業者、国民の責務を明確にすることで環境保全等に関する施策を総合的かつ計画的に推進すると言う。
この法律により、開発計画時に「環境アセスメント」を行うことを義務付けた。しかし、アセスメントを実施する環境影響評価法は民間資本がやるような開発ではなく、大規模な公共工事等を対象にしている。
沖縄の某島で開発されたリゾートホテルは、生態学会や生物学会等がホテルへ環境影響評価を実施することを求めたが、受け入れられず裁判に突入。ホテル側が勝訴し開業した。
この事例は、「生物多様性基本法」の施行前。しかし、生物多様性よりもビジネスが優先されるのは、これからも変わりないだろう。法律の規制も重要だが、国民一人一人の意識が最も大事なのは言うまでもない。
(Written by 川下行三 10/12/30)