リスクコミュニケーション
1.食の信頼が揺らいでいる
食品偽装、事故米・汚染米の転売流通、中国の汚染牛乳と立て続けに事件や事故が起こっている。食品への信頼がこれほど揺らいだことはない。
どのメーカーを信じればいいのか解らない。
そこに、有機リン系殺虫剤ジクロルボスが混入された中国製冷凍インゲンがイトーヨカー堂で販売されたとメディアが大きく報道。どの経路で混入したのか、意図的なものなのか、事件はまだ解明されていない。
事故米・汚染米問題は、その原因をつくり検査が甘かった行政機関に真の責任がある。
チェックをしている団体や行政は信頼に値するのか、消費者は益々不信感を募らせている。
2.食品安全行政の新たな展開
2000年に入りBSEなどの食の安全を脅かす事故が相次いで発生したことから農林水産省と厚生労働省合同の「BSE問題に関する調査検討委員会」を設置、その委員会からの提言で「食品安全基本法」を2003年に制定。
その法令に基づいて、食品安全行政を行う行政組織では有るが中立的な立場で、食品の安全を客観的に評価する機関として「食品安全委員会」が2003年7月に内閣府に設置された。
国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行うこととしている。
3.リスクコミュニケーション
「リスクコミュニケーション」 は、消費者、事業者(メーカーや小売り)、行政担当者などの関係者の間で情報や意見を互いに交換する。リスク分析を行い、リスク評価したものを公開して行く。
雪印乳業という大きな会社でさえ、このコミュニケーションが無かったことが企業を分割する事態にまで発展。倒産や整理に追い込まれた企業がその後も続く。経営者の失態や失言が画面に大写しされる。
内部告発による偽装が発覚。もうこれだけで充分に企業の存続が危ない。
その上に、「情報を隠す、嘘をつく、経営幹部が逃げる」。コミュニケーションを遮断すると、もう行き先は決まっている。
次号でリスクコミュニケーションの成功例も含め述べたい。
(Written by 川下行三 08/10/20)