不安の時代に立ち向かう No.1
1.崖の上のポニョ
宮崎駿の最新作「崖の上のポニョ」7月19日公開されると多くの観客が押し寄せている。ヴェネチア国際映画祭の選出と話題を提供。宮崎駿監督は、「神経症と不安の時代に立ち向かう」作品だと述べている。
「閉塞感が立ち込める時代に、生命の輝きと人間が持つ健やかな心という"初源"の力をぶつける意欲作」だとパンフレットは書く。
さかなの子・ポニョと宗介(5歳の少年)、その両親、老人達という少ない登場人物が、ポニョ、親子、宗介と老人の温かな人間関係が展開する。「ポニョ、宗介大好き」単純な言葉であるが、その愛が現れる。
2.不安の時代
マスコミに頻繁に登場する最近の犯罪事件は、自分の苦しみや苛立ちを何の関係もない通行人や買い物客や店員に、ぶつける。通り魔事件の一種であるが、犯人は麻薬常習者や過去の受刑者ではなく、普通の学生や勤め人。事件を起こす予測はつかない。
自責の念にかられて、自殺する。これは今までも良くある。しかし、自殺ではなく他殺。大きな事件を引き起こして、親に恥をかかせたい。刑務所に入りたかったから。全く理由が理解できない。
尊敬できる政治家がいない。老人を大事にしない制度や法律がはびこる。
自分の将来が見えない。世界で有数の豊かな国になったが、目の前は霧がかかっている。
3.愛が背中を押す
「母親の愛」は懐の深い大きな海に象徴される。母の愛は無条件の愛だ。
「父親の愛」は高くそびえ立つ山に例えることが出来る。大きな夢や目標、社会の厳しさや辛さ、楽しみや喜びを体を持って現す。
子供達は、両親から受けた愛を心の壺に貯める。その壺に愛が満たされると、他人に上げる。その壺に愛が不足すると、他人から愛を求める。
宗介もポニョも両親の愛を壺一杯受ける。
ポニョはさかなの子であるが、宗介と出会い人間になることを決める。
魔法を捨て平凡な人間を選ぶ。愛がポニョの背中を押す。不安な時代、神経症の時代だからこそ、思いやりや優しさがいる。
先ず席を譲ろう。高齢者に優しく接しよう。足下からやってみよう。
(Written by 川下行三 08/08/01)